糖化は、肌や臓器などの老化の原因の1つとされている現象です。肌においては細胞がダメージを受けることでニキビやシワが増えたり、たるみが促されたりします。また、臓器への影響としては、腎機能の低下が挙げられます。糖化に対処することで若々しい肌を保ちやすくなるとともに、全身の健康に良い影響を与えられます。本記事では、糖化の意味や身体に起きる変化、対処法などについて詳しく解説します。
糖化とは
糖化とは、たんぱく質や脂質が体内にある余分な糖と結びつく現象のことです。糖化によって生成される物質をAGE(糖化最終生成物)といい、老化促進物質といわれています。AGEは、組織や細胞にダメージを与え、老化の進行やさまざまな疾患のリスクを高めるとされています。発見した人の名前をとってメイラード反応とも呼ばれる現象です。
糖化の身体への影響
糖化は身体の中で日常的に起きている現象ですが、過度に起きると健康にさまざまな影響がおよびます。糖化による身体への影響について詳しく見ていきましょう。
シミやシワの増加
糖化が進行すると、肌の老化に関連するシミやシワが増加する傾向があります。血液中の糖分とたんぱく質が結合し、結果として生成される糖化最終生成物(AGEs)が、皮膚のコラーゲンとエラスチンなどの重要なたんぱく質にダメージを与えるといわれているためです。その結果、肌の弾力性が低下し、シミやシワの形成、くすみたるみなど肌の悩みにつながります。
血管へのダメージ
糖化は、血管へのダメージを引き起こす要因の1つです。血管の組織が糖化によって傷つき、血管壁の強度が低下し、血管壁に炎症が起こりやすくなります。炎症は、血管内膜に損傷を引き起こし、コレステロールやその他の血管内の物質が付着しやすくします。その結果、動脈硬化のリスクが高まるのです。
動脈硬化(atherosclerosis)は、動脈の壁にコレステロールやその他の物質が蓄積して動脈が硬くなる状態のことです。動脈は血液を心臓から全身に送り出すための重要な役割を果たしており、全身の血液循環に影響を与えます。動脈内のプラーク(コレステロールやその他の物質が蓄積したもの)が増加すると、動脈の内径が狭くなり、血液の流れが妨げられ、血栓が生じやすくなります。その血栓が心臓の血管を詰まらせると心筋梗塞、脳血管を詰まらせると脳梗塞が生じ、命に危険が及ぶ可能性もあるため、動脈硬化は予防と早期発見・早期治療が重要です。
腎機能の低下
糖化が進行すると、腎臓の機能にも深刻な影響を与える可能性があります。腎臓は、血液中の老廃物や余分な水分を除去して尿を生成する重要な器官です。老廃物や余分な水分をろ過する部分はたんぱく質で構成されており、これが糖化によって機能が損なわれる可能性があります。
その結果、血液中の老廃物や余分な水分が効率的に除去されず、体内に留まることになります。この状況が持続すると、高血圧や浮腫などの症状が現れるかもしれません。さらに、腎臓の機能が低下すると、尿中のたんぱく質の量が増加するため、たんぱく尿として知られる症状が発生することもあるでしょう。
糖化しているか調べる方法
糖化の程度は、AGEs(糖化最終生成物)の蓄積量を測定することで確認できます。AGEsは、糖化反応によって形成される化合物であり、その量は糖化の程度を示す指標です。
採血による方法では、採取した血液サンプルを用いて、血液中のAGEsの濃度を測定します。一般的に、高濃度のAGEsは糖尿病や加齢などのリスク因子と関連しており、これらの状態の進行を評価するために利用されます。また、測定器を使用して体内の組織や液体からAGEsを直接測定することも可能です。
糖化が進みやすい人の特徴
糖化の進みやすさには個人差があります。次のような人は糖化が進みやすいといわれています。
糖質の摂取量が多い
糖質は、炭水化物を構成する主要な栄養素であり、体の重要なエネルギー源です。しかし、糖質の摂取量が過剰になると、糖化が進行しやすくなります。
たとえば、砂糖や加工食品、甘い飲料など、高糖質の食品を過剰に摂取すると、血糖値が急激に上昇します。高血糖状態が続くと、血液中の糖分がたんぱく質と反応してAGEs(糖化最終生成物)が生成され、体内のたんぱく質や組織が損傷を受け、糖化が進行します。とくに以下のような人は糖化が進みやすいようです。
- 加工食品を好む人:多量の糖分が含まれているものが多い
- 甘い飲料を頻繁に飲む人 :甘い飲料には、高濃度の砂糖が含まれている場合がある
- 高GI(グリセミック・インデックス):食品を好む人……高GI食品は、血糖値を急激に上昇させる
運動量が少ない
糖化が進みやすい人の特徴の1つは、運動量が少ないことです。運動不足は、体内の糖質をエネルギーとして消費する機会を減らし、結果として糖質が余りやすくなります。これにより、糖化が進行するリスクが高まります。
たとえば、デスクワークをしている人や、日常生活で積極的に運動をしない人は、運動量が少なくなりがちです。また、高齢者や身体的制約を持つ人々も、運動不足に陥りやすい傾向があります。運動不足は体重の増加や脂肪の蓄積を促進し、肥満のリスクを高めることにも注意が必要です。肥満の状態では、血糖値を是正するインスリンが効きにくくなる物質が中性脂肪から分泌され、さらに血糖値が下がりにくくなります。その結果、糖化も進むことになるでしょう。
糖化を防ぐ方法
糖化を防ぐためには、糖質の過剰摂取を防ぐとともに、規則正しい生活を心がける必要があります。糖化を防ぐ方法について詳しく見ていきましょう。
果物や野菜を摂る
糖化を防ぐ方法の1つは、糖化を抑える栄養素を積極的に摂取することです。とくに、ビタミンCの摂取が推奨されています。ビタミンCは、糖化反応を抑制する効果が期待できます。さまざまな野菜や果物に多く含まれているため、好き嫌いが多いほうでも比較的摂りやすい栄養素です。
たとえば、キウイやオレンジ、レモンなどの柑橘類、イチゴやパイナップルなどのフルーツは、ビタミンCを豊富に含んでいます。食事のデザートやおやつとして取り入れることで、ビタミンCを効果的に摂取が可能です。また、ビタミンCはコラーゲンの生成を促進する働きもあります。コラーゲンは皮膚の弾力性や潤いを保つために重要な成分であり、十分なビタミンCを摂取することで、肌の健康をサポートすることが可能です。糖化を防ぎつつ肌の健康を促すことができるため、美肌ケアにおいて重要な栄養素といえるでしょう。他にも、ビタミンEやポリフェノールなども糖化を抑制する効果があります。おもにナッツや種子類、オリーブオイルなどの食品が挙げられます。
ただし、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。特定の栄養素に偏った食生活では、身体の健康を損ねる可能性が高まります。肌の健康やアンチエイジングにはさまざまな栄養が必要なため、ビタミンCやビタミンEなどを意識的にとりつつも、バランスのよい食事を心がけましょう。
十分かつ良質な睡眠をとる
十分かつ良質な睡眠をとることは、糖化を防ぐために重要です。睡眠不足は、体内の代謝機能や免疫機能を低下させ、糖化物質であるAGEs(糖化最終生成物)の排出を妨げる可能性があります。
睡眠中には、成長ホルモンやメラトニンといったホルモンが分泌されます。これらのホルモンは、体内の修復や再生を促し、新陳代謝や免疫機能を活性化する役割があり、成長ホルモンは細胞の修復を促進し、免疫機能を強化することで、AGEsの排出を助けます。
このように、十分な睡眠をとることは糖化の防止に重要です。一般的には、毎日6時間以上の睡眠を確保することが望ましいとされています。しかし、個々の睡眠時間の適切な量は個人によって異なるため、自分に合った睡眠時間を確認することが先決です。
喫煙を避ける
喫煙を避けることは、糖化だけでなく肌の健康にも重要です。喫煙は、肌を傷めるさまざまな影響を及ぼすことが知られています。とくに、喫煙は糖化を促進し、肌の老化を早める可能性があります。さらに、喫煙はビタミンCを破壊するため、肌の健康を保つ上で重要な栄養素を減少させることにつながります。喫煙による糖化は、煙に含まれる有害物質が血液中の糖分と反応してAGEs(糖化最終生成物)を生成することによるものです。
さらに、喫煙はビタミンCを破壊する作用もあります。ビタミンCは、抗酸化作用を持ち、肌の健康を維持するために重要な役割を果たしています。しかし、喫煙によって体内のビタミンCが消費されるため、ビタミンCの欠乏状態に陥りやすくなるのです。これにより、肌の抗酸化能力が低下し、糖化を含む酸化の影響が大きくなる可能性があります。喫煙を自分でやめることが難しい場合は、喫煙外来を利用しましょう。
まとめ
糖化は肌の老化を促進する要因の1つであり、AGEsの生成を招きます。糖化によってシミやシワの増加、血管のダメージ、腎機能の低下などが引き起こされるといわれています。糖化が進みやすい人は、糖質摂取量の多さや運動不足などが原因です。
若々しさを保つには、ビタミンCやコラーゲンなどの栄養素を摂取し、十分かつ良質な睡眠をとることがおすすめです。また、喫煙は糖化を促進するため、避けたほうがよいでしょう。日々の習慣を見直し、自分の体にとってよい栄養素や対策方法を身につけ、糖化を防ぎましょう。