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食事の幅が広がり、脂質の摂取量は増加傾向にあるといわれています。脂質には大切な役割があるため、1日の摂取量の目安を知り、適度に脂質を食事に取り入れることは大切です。本記事では性別や年齢別の1日の脂質の摂取量の目安や脂質の種類を解説します。
そもそも脂質の役割とは?
脂質は炭水化物、たんぱく質と並び三大栄養素の一つです。とくに脂質は1gあたり9キロカロリーと三大栄養素のなかでも高いエネルギーを得られます。脂質はエネルギー源として働くだけでなく、ホルモンや細胞膜、角膜を構成する働きもあるのです。また、皮下脂肪として蓄えられた脂肪は、臓器を保護したり、寒さから体を守ったりする働きもあります。
脂質の摂りすぎや不足するとどうなる?
三大栄養素のなかでもとくにエネルギー源として働く脂質ですが、摂りすぎても不足しすぎても健康に影響を及ぼすといわれています。脂質の摂りすぎや不足しすぎによるリスクについて解説します。
脂質を摂りすぎると生活習慣病のリスクが高まる
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、総摂取エネルギーのうち脂質による摂取エネルギーが占める割合は女性の場合20%程度、男性の場合30%程度ですが、近年では日本人の食事に占める脂質量が目安とする摂取量をオーバーしている傾向にあります。これは食事の欧米化が進み、肉や揚げ物など脂質量が多い食事を好んで食べる人が増えているためといわれています。脂質の摂りすぎは心筋梗塞などの病気のリスクや肥満になる可能性が高まるため、注意が必要です。
脂質は不足しすぎても病気になるリスクがある
脂質の摂りすぎは病気や肥満になるリスクを高めますが、摂取量が少なすぎるとエネルギーが不足し、疲れやすくなる可能性があります。とくに加齢とともに脂っこいものが苦手になったり、胃もたれしたりして、脂質の摂取量が不足している高齢者も多いです。また、脂質の摂取量が不足すると、脂質と一緒に体内に吸収される脂溶性ビタミンが吸収されなくなり、ビタミン欠乏になる可能性もあります。脂質を控えることがそのまま健康につながるとは限らないことを覚えておきましょう。
脂質の1日の摂取量の目安
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、脂質に関して、総脂質(目標量)のほかに、飽和脂肪酸量(目標量)、n-3系脂肪酸(目安量)、n-6系脂肪酸(目安量)が定められています。n-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)とn-6系脂肪酸(オメガ6脂肪酸)は不飽和脂肪酸の一種で、体内では作り出せない必須脂肪酸です。必須脂肪酸は食品からしか摂取できないほか、不足するとさまざまな疾病をはじめ、脳の発達障害を引き起こす可能性があるので、積極的に摂取することが推奨されています。次の表を参考に、食事のバランスや摂取量を見直してみてください。
年齢 | 脂質 (エネルギー比率) |
飽和脂肪酸 (エネルギー比率) |
n-3系脂肪酸 (g/日) |
n-6系脂肪酸 (g/日) |
---|---|---|---|---|
18~29歳 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 2.0g | 11g |
30~49歳 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 2.0g | 10g |
50~64歳 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 2.2g | 10g |
65~74歳 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 2.2g | 9g |
75歳以上 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 2.1g | 8g |
年齢 | 脂質 (エネルギー比率) |
飽和脂肪酸 (エネルギー比率) |
n-3系脂肪酸 (g/日) |
n-6系脂肪酸 (g/日) |
---|---|---|---|---|
18~29歳 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 2.0g | 11g |
30~49歳 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 2.0g | 10g |
50~64歳 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 2.2g | 10g |
65~74歳 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 2.2g | 9g |
75歳以上 | 20%以上30%未満 | 7%以下 | 2.1g | 8g |
たとえば身体活動量が普通程度の18歳以上の女性の1日の摂取カロリーの目安は、2,200キロカロリー前後といわれています。その場合、脂質の摂取上限を1日の摂取カロリーの30%とすると660キロカロリーとなるため、脂身のついたリブロースステーキを300g以上食べると脂質の摂りすぎになります。摂取カロリーの目安は年齢や基礎代謝によって変わるため、まずは1日の摂取カロリーの目安を把握しておくと、脂質の摂りすぎを防げるでしょう。
摂っていい脂質は?脂質の種類とは
脂質と一口にいってもさまざまな種類があります。たとえば、肉の脂質とオリーブオイルの脂質では種類が違います。脂質の種類や摂っていい脂質、摂りすぎるとよくない脂質について解説します。
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は乳製品や肉などの動物性食品に多く含まれており、エネルギー源として働く役割を持っています。しかし、摂取しすぎると血中の悪玉コレステロールや中性脂肪を増やし、健康被害を及ぼすリスクがあるため、注意が必要です。近年の日本で広く普及したパーム油などの植物油にも飽和脂肪酸が含まれており、飽和脂肪酸の摂取量増加が問題視されています。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は魚介類や大豆油などに多く含まれており、適量の摂取によって健康に役立つといわれています。不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の2種類に分かれており、血液中の中性脂肪やコレステロールを減らして、血液をサラサラにする効果があるといわれています。
また、不飽和脂肪酸のなかでもナッツや植物油に含まれるn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)とn-6系脂肪酸(オメガ6脂肪酸)は必須脂肪酸と呼ばれ、脳神経機能を保つために重要な役割を果たします。必須脂肪酸は体内では生成できないため、食品から摂取する習慣をつくるのがおすすめです。
ただし、不飽和脂肪酸は油脂の加工や精製によって飽和脂肪酸やトランス脂肪酸となることがあります。トランス脂肪酸はマーガリンやショートニング、それらを使用したパン、ケーキ、ドーナツなどに含まれていることが多く、悪玉コレステロールを増やし、動脈硬化などの心疾患にかかるリスクを高める可能性があるので注意が必要です。
脂質が多く含まれている食品
脂質のなかでも摂りすぎると健康に被害を及ぼす飽和脂肪酸が多く含まれる食品は、おもに次のとおりです。
- 可食部100gあたり
- ( )の付いた数値は、類似食品の収載値から推計や計算により求めた成分であることを示す
脂質量(g) | 飽和脂肪酸量(g) | |
---|---|---|
うし 交雑牛肉 リブロース 脂身つき 生 | 51.8 | 18.15 |
ぶた ばらベーコン | 39.1 | 14.81 |
牛脂 | 99.8 | 41.05 |
マーガリン 家庭用 有塩 | 83.1 | 23.04 |
カレールウ | 34.1 | 14.84 |
ナチュラルチーズ チェダー | 33.8 | 20.52 |
クロワッサン リッチタイプ | 26.8 | (12.16) |
ミルクチョコレート | 34.1 | 19.88 |
肉類の場合、脂身が多い部位ほど飽和脂肪酸量が多い傾向にあります。魚にも脂質は含まれていますが、脂身の多い肉類と比較すると脂質量が少なく、飽和脂肪酸量はかなり少なくなっています。また、飽和脂肪酸は脂身の多い肉類だけでなく、カレールウやパンなどにも多く含まれているため、食事のバランスが偏っている方は飽和脂肪酸を摂取しすぎている可能性があるため、注意しましょう。反対に飽和脂肪酸が少ない食品は次のとおりです。
- 可食部100gあたり
脂質量(g) | 飽和脂肪酸量(g) | |
---|---|---|
ぶた 大型種肉 ヒレ 赤肉 生 | 3.7 | 1.29 |
にわとり 若どり・主品目 むね 皮つき 生 | 5.9 | 1.53 |
にわとり 若鶏肉 ささ身 生 | 0.8 | 0.17 |
ヨーグルト 全脂無糖 | 3.0 | 1.83 |
同じ肉類でも、脂身の量によって脂質量や飽和脂肪酸量は大きく変わります。また、乳製品でも牛乳と無糖のヨーグルトを比較すると、たんぱく質の含有量はほとんど変わらないのに対し、無糖ヨーグルトのほうが脂質は低いので、脂質以外の栄養素にも注目して食品を選ぶのがおすすめです。
1日の脂質に気をつけながら食事を摂るコツ
脂質の摂取量は調理の仕方や食材の種類によって、調節できます。適度に良質な脂質を食事に取り入れ、バランスの取れた食生活を送ってみてください。
調理法に気をつける
油を多く使う調理法ほど、必然的に食事の脂質量は多くなります。調理法は次の順番でエネルギーが多くなるといわれています。
茹でる < 網焼き < 蒸す < 生 < 煮る < 炒める < 揚げる
油で揚げる場合はできるだけ油をきるように心がけたり、フライパンにアルミシートを敷いて油を引かずに調理したりするだけでも、脂質の摂取量を減らせます。また、調理する前に豚肉の脂身をできるだけ包丁でカットしたり、鶏肉の皮を取り除いたりなど、脂身を適度に除去することでヘルシーに調理できるので試してみてください。
できるだけ自炊を心がける
外食は調理時に多くの油を使用している可能性があるため、1日1回までにするなど、できるだけ控えるのがおすすめです。外食と比較すると、自分で食材や調理法が選択できる自炊のほうが、脂質量を調節しやすいといえます。また、コンビニの食品で食事を済ませる場合は、栄養成分表示をしっかり確認し、脂質量が増えすぎないように心がけましょう。
脂質の選び方に注意する
飽和脂肪酸は肉に多く含まれる傾向があり、少ない量でも目安とする脂質の摂取量をオーバーしてしまうかもしれません。しかし、部位によって飽和脂肪酸量は大きく変わります。たとえば脂身付きの牛リブロースステーキ(100g)は飽和脂肪酸量が18.15gであるのに対し、鳥ささみ(100g)は飽和脂肪酸量が0.17gと数値に大きな違いが出ます。また、同じ脂質でもナッツやエゴマ油などに含まれる必須脂肪酸は食事でしか摂取できないため、バランスよく取り入れたい脂質の一つです。このように、脂質の量だけでなく脂質の種類を重視して選ぶことが大切です。
まとめ
三大栄養素の一つである脂質は大切なエネルギー源です。しかし、摂取しすぎても不足しても病気をはじめとしたトラブルの原因になる可能性があります。また、脂質には種類があるため、脂質の摂取量を抑えればいいというわけではありません。1日の適正摂取量を知り、バランスよく脂質を取り入れた食事を心がけることで、健康につながるでしょう。