食品に含まれる栄養素の中には、健康な生活に必要なものとして「五大栄養素」があります。病気の予防や健康の維持には、栄養バランスのとれた食事をとることが大切です。本記事では、五大栄養素の役割や栄養素を多く含む食品、栄養バランスの良い食事を解説していきます。
五大栄養素とは
五大栄養素とは、「炭水化物」「脂質」「たんぱく質」「無機質(ミネラル)」「ビタミン」のことを指します。この五大栄養素は、人が健康的に生きていくうえで体に欠かせない栄養成分です。次に、五大栄養素のおもな役割を解説していきます。
五大栄養素の役割とは
五大栄養素には、「体をつくる」「体の調子を整える」「エネルギーを補給する」など、おもに3つの役割があります。それぞれについて解説していきます。
体をつくる
五大栄養素の一部は、体をつくるという大事な役割をもっています。特にたんぱく質は、「筋肉」「内臓」「皮膚」「髪の毛」「血液」などといった体の組織をつくる重要な栄養素です。たんぱく質が不足すると筋肉量が減って疲れやすくなったり、代謝や免疫力が低下したりといった悪影響が生じます。
体の調子を整える
体の調子を整えるのも、五大栄養素です。「ビタミン」や「ミネラル」は、体のエネルギーにはなりませんが、体のさまざまな機能を正常に保ち、体の調子を整える働きをします。どちらも体内でつくることができないため、食べ物から摂取する必要がある栄養素です。
エネルギーを補給する
体を動かすには、エネルギー補給が欠かせません。「炭水化物(糖質)」と「脂質」は、体内で消化されると、脳や体を動かすエネルギー源になります。また、2つの栄養素に「たんぱく質」を加えて「エネルギー産生栄養素」と呼ばれています。
五大栄養素の種類
五大栄養素である「たんぱく質」「炭水化物 (糖質) 」「脂質」「ビタミン」「ミネラル」の5つは、体を維持するために欠かせない栄養素です。それぞれの働きを理解したうえで、普段の食事でバランスよく摂取していきましょう。
たんぱく質
人の体内にはさまざまな種類のたんぱく質が存在しています。たとえば、筋肉を構成するアクチン、ミオシンほか、唾液や血液に存在するラクトフェリン、軟骨などを構成するコラーゲンなど実に数万種類にも及ぶといわれています。それぞれの構造や働きは異なるものの、どのたんぱく質も20種類のアミノ酸から構成されています。20種類のうち、体内で合成できる11種類を非必須アミノ酸といいます。残りの9種類を必須アミノ酸といい、体内でつくることができないため、食事から摂取する必要があります。
食事から摂取したたんぱく質は、消化や吸収を経てアミノ酸に分解されます。その後、体に必要なたんぱく質に再合成され、「筋肉」「臓器」「骨」などをつくる材料になったり、酵素やホルモンとして代謝や体の機能を調整したりします。また、分解されたアミノ酸はドーパミン、アドレナリンなどの神経伝達物質やビタミンといった生理活性物質の前段階の物質としても重要な働きをします。
炭水化物(糖質)
炭水化物の中でも糖質は、分子の数によって「単糖類」「少糖類」「多糖類」に分類されます。たとえば、ブドウ糖(グルコース)は単糖類、ショ糖(白砂糖)は少糖類、でんぷんは多糖類に分かれます。
糖質を摂取すると体内で消化された後に、体のエネルギー源となるブドウ糖に変わり、脳をはじめとする体の各組織に供給されます。また、糖質は同じようにエネルギー源となる脂質よりも消化吸収が早いため、素早くエネルギー補給をしたいときに最適です。
さらに、糖質は、血液の中では血糖として存在し、インスリンがその濃度をコントロールしています。血糖濃度が高まると、糖質は脂肪として体に蓄えられる仕組みです。
一方で、糖質が不足すると、脳や体のパフォーマンスが低下するリスクがあります。たとえば、日常生活で疲労感や集中力低下を感じるときは、糖質不足が原因かもしれません。低炭水化物ダイエットが注目されていますが、炭水化物を極端にカットすることはおすすめできません。体の疲れや判断力の低下を防ぐためにも、食事のバランスを考えながら炭水化物を適切に摂取することが大切です。
脂質
脂質は、体のエネルギー源になるほか、エネルギーを蓄える役割もあります。また、細胞膜の主成分でもあり、体の構造を維持しています。
脂質には「中性脂肪」「リン脂質」「リポたんぱく質」「脂肪酸」「コレステロール」など多くの種類が存在します。たとえば、n-3系脂肪酸やDHA、EPAなどは、脂質の脂肪酸の一種で、心血管の健康維持に役立つとされています。必須脂肪酸であるn-6系脂肪酸は大豆油やごま油などに、n-3系脂肪酸は植物油や魚介類に多く含まれています。
食べ物を通して脂質を摂取すると、おもに小腸で消化・吸収されます。脂質は種類ごとに、エネルギー源やホルモンの材料など、体内での役割が異なります。そのため、さまざまな種類の脂質をバランスよく摂取することが大切です。
ビタミン
ビタミンは体の機能を正常に保つために欠かせない栄養素で、おもに「水溶性ビタミン」と「脂溶性ビタミン」に分類されます。
水溶性ビタミンには、ビタミンB群(B1、B2、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)とビタミンCがあり、脂溶性ビタミンにはビタミンA、D、E、Kがあります。人間の体はビタミンをつくることができないため、食べ物を通して摂取する必要があります。
たとえば、偏食や過度なダイエット、進学や就職で一人暮らしを始めたことによる不規則な食生活などによりビタミンが不足すると、病気とまではいかないまでも慢性的な体調不良を感じる潜在性ビタミン欠乏症になるケースがあるため注意が必要です。ただし、一般的には通常の食事をしていればビタミン欠乏症を心配する必要はありません。
ミネラル(無機質)
ミネラル(無機質)は、鉄やナトリウム、カルシウムなど、体内で微量ながら重要な役割を果たす元素の総称です。このうち、体に欠かせない「必須ミネラル」は全部で16種類あります。どれも体内でつくることができないため、食べ物を通して摂取しなければいけません。
ミネラルの働きは種類によって異なりますが、体をつくったり、免疫や代謝に影響したりすることが共通点です。たとえばカルシウムは骨や歯を強化したり、免疫機能を高めたりする働きを持ちます。また、鉄は赤血球に含まれるヘモグロビンを生成するミネラルです。
ミネラルが不足すると「欠乏症」や「体の不調」が起こりやすくなるため、注意が必要です。
【五大栄養素別】栄養素が多く含まれるおもな食品の例
五大栄養素ごとに、栄養素を多く含むおもな食品の例を紹介します。たんぱく質や炭水化物、脂質は文部科学省が公開しているサイト「食品成分データベース」を参考に、可食部100gあたりの推定含有量をまとめました。ビタミンとミネラルは種類別にそれぞれ紹介していきます。
たんぱく質が多く含まれる、おもな食品例
- 肉類(生ハム: 24.0g)
- 魚介類(イワシ丸干し:32.8g)
- 豆類(きな粉:35.5g)
- 卵(卵黄:16.5g)
食品の中でとくにきな粉やイワシ丸干し、生ハムには多くのたんぱく質が含まれています。
炭水化物(糖質)が多く含まれる、おもな食品例
- 米(白米:15.7g)
- 麺(中華麺:29.2g)
- パン(フランスパン:57.5g)
- いも類(じゃがいも:19.2g )
- 果物(ぶどう:15.7g)
食材の中で白米やじゃがいも、ぶどうには、多くの炭水化物(糖質)が含まれています。
脂質が多く含まれる、おもな食品例
- 油(植物油脂類:100g中100g)
- 調味料(ラー油:99.8g)
- 肉類(リブロース:86.7g)
- 魚類(あゆ※養殖内臓:55g)
植物油脂類は脂質を多く含むため、調理の際に手軽に取り入れられます。ただし、とりすぎには注意が必要です。
ビタミンが多く含まれる、おもな食品
- ビタミンA:鶏レバー、モロヘイヤなど
- ビタミンD:カツオ、イワシなど
- ビタミンE:アーモンド、西洋かぼちゃなど
- ビタミンK:納豆、干し海苔など
- ビタミンB1:豚ヒレ、鰻の蒲焼きなど
- ビタミンB2:豚レバー、鰻の蒲焼きなど
- ビタミンB6:サンマ、バナナなど
- ビタミンB12:しじみ、鶏レバーなど
- ナイアシン:鶏むね肉、たらこなど
- パントテン酸:鶏レバー、子持ちガレイなど
- 葉酸:ブロッコリー、ひよこ豆など
- ビオチン:イワシ、鶏卵など
- ビタミンC:パプリカ、柿など
ビタミンは、とくに「採れたての野菜」や「フルーツ」に多く含まれています。
ミネラル(無機質)が多く含まれる、おもな食品
- ナトリウム;食塩、しょうゆなど
- 塩素:食塩、海藻など
- カリウム:大豆、アボカドなど
- カルシウム:イワシ(丸干し)、ヨーグルトなど
- マグネシウム:大豆、アーモンドなど
- リン:豚ヒレ、大豆など
- イオウ:イイダコ、甘海苔など
- 鉄:豚レバー、あさりなど
- 亜鉛:牡蠣、豚レバーなど
- 銅:イイダコ、アーモンドなど
- マンガン:栗、玄米など
- コバルト:チョコレート、レバーなど
- ヨウ素:昆布、イワシなど
- セレン:イワシ、ねぎなど
- クロム:あさり、牛肉など
- モリブデン:レバー、大豆など
ミネラルは、肉類や魚類、野菜など食材によって含まれるミネラルの種類が異なるため、多くの食材を取り入れましょう。
五大栄養素がバランスよくとれる食事のポイント
食事でバランスよく栄養をとるには、「主食・主菜・副菜をそろえる」「偏らない食事をする」「1日のトータルで栄養バランスを考える」などのポイントがあります。食事が偏ると栄養バランスまで崩れるため、注意が必要です。
主食・主菜・副菜をそろえる
主食・主菜・副菜をそろえるだけでも、栄養バランスがとれる食事が目指せます。特に、以下の栄養素を取り入れるのがおすすめです。
- 主食:精白米、玄米、食パン類、そば、うどんなどで、炭水化物を摂取する
- 主菜:おかず。主に肉類、魚類、豆類、卵類などで、たんぱく質・脂質を摂取する
- 副菜:海藻、きのこ、根菜など、ビタミン・ミネラル・食物繊維を摂取する
そのほか、汁物の追加もおすすめです。多様な食品を取り入れることで、栄養バランスをさらにアップできます。
偏らない食事をする
栄養素の摂取バランスを保つためにも、偏らない食事をするのが大切です。炭水化物だけでなく、副菜や汁物の具を増やす、果物を追加するなど、簡単に品目数を増やす方法で栄養バランスを意識した食事をとるのがおすすめです。
1日のトータルで栄養バランスを考える
一日三食の食事を通して、栄養バランスを整えるのも大事です。そのため、1食にこだわりすぎる必要はありません。もし1日の中で補えなかった栄養素がある場合は、翌日、翌々日に追加しても良いでしょう。
まとめ
本記事では、五大栄養素の役割や多く含まれる食品、そして栄養バランスのとれる食事を解説しました。五大栄養素は、体をつくり、調子を整え、エネルギーを補給する重要な役割があります。栄養バランスのとれた食事は、病気の予防や健康維持につながります。ぜひ、この記事を参考に1日のトータルで栄養バランスを整えてみてください。