呼吸によって取り込まれた酸素の一部が変化して産生される「活性酸素」は、過剰に増えるとさまざまなデメリットがあります。放っておくと肌トラブルや病気の原因になるため、生活習慣や食生活の見直しがおすすめです。本記事では、活性酸素対策を行わない場合のリスクや、活性酸素対策に役立つ食べ物や飲み物、生活習慣について解説します。
活性酸素とは?わかりやすく解説
日常的に繰り返す呼吸によって体内に取り込まれた酸素のうち、およそ数%が通常より活性化して活性酸素に変化するといわれています。活性酸素は細胞伝達物質や免疫機能として働く一方で、増えすぎると細胞を傷つけてしまうことがあります。人間の体内には活性酸素から体を守るための「抗酸化防御機構」が備わっていますが、活性酸素が過剰に増えるとこの防御がうまく働かなくなってしまいます。
せっかくのエイジングケアが活性酸素で台無しに!?
普段、私たちの体の中では活性酸素の産生と抗酸化防御機構のバランスが取れています。しかし、さまざまな原因で活性酸素が過剰に増えるとバランスが崩れ、自分自身を酸化させようとする「酸化ストレス」状態になってしまうのです。酸化ストレスは老化を促進するため、肌にシミやシワが現れたり、白髪が増えたりしてしまいます。また、疲れやすくなったり病気にかかりやすくなったりすることもわかっています。
活性酸素は加齢や生活習慣が原因で増える
活性酸素は加齢とともに増えるといわれています。加齢とともに活性酸素を無毒化する抗酸化力が弱まるので、活性酸素が溜まりやすい状態になってしまうためです。年齢以外にも、紫外線や放射線、大気汚染、ストレス、たばこ、薬剤、酸化した食品の摂取などが活性酸素を増殖させる原因になります。過度な運動も体に入る酸素の量が増えるため、活性酸素の量を増やすリスクがあります。
活性酸素を除去しないとどうなる?
活性酸素は増えすぎると健康面や美容面に悪影響を及ぼす可能性があります。もし、睡眠不足や過剰な運動など活性酸素が増えるような生活習慣がある場合は、その悪影響について理解しておきましょう。
肌トラブルや老化の原因になる
日光浴には体内時計が正常になったり、体内でビタミンDが生成されたりといった良い影響があります。しかし、紫外線を浴びすぎると活性酸素が増え、シミの原因であるメラニン色素の産生を促すといわれています。また活性酸素は今あるシミを濃くする可能性もあるため、活性酸素が過剰に増えると肌のエイジングサインが気になってしまうかもしれません。
病気の原因になる
活性酸素が過剰に生成され酸化ストレスが高い状態が続くと、酸化ストレスによって変化した分子が蓄積します。これにより、糖尿病や動脈硬化などの病気を引き起こす可能性があるといわれています。また、活性酸素が過剰に増えて酸化ストレスが高まると、細胞が損傷を受けてがん化するリスクがあることも懸念点です。加えて活性酸素によって酸化したたんぱく質が蓄積すると、高齢者に多い病気であるアルツハイマー病やパーキンソン病の発症リスクが高まるといわれています。
活性酸素は完全に除去できない
活性酸素は完全に除去することはできません。たとえば、血液に含まれる白血球は細菌やウイルスといった病原体から体を守っていますが、この白血球が正常に働くために活性酸素が重要な役割を果たしています。また、活性酸素は細胞の分化やシグナル伝達にも関わっています。そのため活性酸素が増えすぎないような生活習慣を心がけたり、増えすぎた活性酸素を減らす「抗酸化力」を高めたりすることを目指すことが大切です。
活性酸素の除去に役立つ食べ物
緑黄色野菜や魚類などをバランスよく食べることは、活性酸素の除去に役立ちます。ここからは「活性酸素の除去に役立つ」といわれている食品を紹介しますので、毎日の食事に意識して取り入れてみましょう。
緑黄色野菜や果物
緑黄色野菜と聞くと、ほうれん草やにんじん、かぼちゃなど身近な食材が思い浮かびますね。実は、緑黄色野菜には一定の基準があることをご存じでしょうか。厚生労働省が定めた基準では「原則として可食部100g当たりカロテン含量が600µg(マイクログラム)以上の野菜」となっています。
ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEなどに注目して緑黄色野菜を選んでみましょう。
ビタミンAは、主に緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンに多く含まれており、にんじんやかぼちゃなどには、特に多くのβ-カロテンが含まれています。またβ-カロテンは油と一緒に摂取すると吸収が良くなるため、炒め料理などでの調理がおすすめです。
ビタミンCは、抗酸化ビタミンで、緑黄色野菜ではブロッコリーやケール、ほうれん草が該当します。果物ではオレンジやグレープフルーツが代表例です。ビタミンCは水に溶けやすいほか、熱に弱いため、水洗いしすぎず、サッと炒めて調理するなど調理方法を工夫してみてください。
ビタミンEは、抗酸化作用を持つビタミンで、緑黄色野菜ではモロヘイヤやかぼちゃ、しそなどが該当します。果物ではキウイフルーツなどが代表例です。ビタミンEは酸化されやすい性質があるため、取れたての野菜を使うなどできるだけ鮮度の良い状態のものを選びましょう。
植物油やナッツなどの良質な脂質
植物油やナッツなどの良質な脂質は、老化や病気の原因となる過酸化脂質の発生を抑えてくれるといわれています。間食としてナッツを取り入れたり、調理をする際の油を植物油にしたりすることで、活性酸素の増殖を抑えられるでしょう。おすすめの植物油は次のとおりです。
- オリーブオイル
- ごま油
- アマニ油
- MCTオイル
- チアシードオイル
大豆、イワシ、サバ、牛肉、豚肉など
大豆、イワシ、サバ、牛肉、豚肉などに含まれるコエンザイムQ10は、酸化によって効果を失ったビタミンEをサポートする働きも持っているため、日々の食生活に意識して取り入れたい食材です。
ごま
ごまにはセサミンやセサミノ―ルが豊富に含まれています。ごまは単体で摂取するのが難しいため、ほかの食材と一緒に摂取するのがおすすめです。味噌汁、おひたしや炒め物にすりごまなどを加えると、料理のアクセントにもなり美味しく食べることができます。ぜひ意識して取り入れてみてください。
活性酸素対策に役立つ飲み物
ポリフェノールが含まれる飲み物も、活性酸素の対策に役立ちます。ポリフェノールが豊富に含まれている飲み物は次の通りです。
- 赤ワイン(100gあたりのポリフェノール含量量:230mg)
- コーヒー(同:200mg)
- 緑茶(同:115mg)
- 紅茶(同:96mg)
ただし、ポリフェノールが含まれる食品は歯への着色が気になるところ。飲食した後は水を飲んだり、早めに歯磨きをしたりすることで予防が可能です。また、緑茶やコーヒー、紅茶に含まれるカフェインは、体質や飲む時間帯によっては睡眠の質を下げる可能性があります。就寝前の摂取や飲みすぎには注意してください。
活性酸素の除去に役立つ生活習慣
活性酸素の除去には、生活習慣の見直しもおすすめです。次にあげたポイントを意識して、生活習慣を変えることで、活性酸素の除去を目指しましょう。
適度な運動
活性酸素を除去するには適度な運動を心がけることが大切です。ウォーキングなどの運動を習慣づけることで、無理なく活性酸素を抑制できます。無理のない範囲で、ウォーキングや水中歩行など体に負担の少ない運動から始めてみるのがおすすめです。重量を持ち上げるウエイトトレーニングなどの激しい運動は活性酸素を増やす原因にもなりかねないため、気持ちよく取り組める程度の運動を心がけてみてください。
紫外線対策
紫外線を必要以上に浴びると皮膚の細胞内に大量の活性酸素を発生させるほか、肌のハリを保つために大切なコラーゲンやエラスチンを破壊してしまいます。そのため、エイジングケアには紫外線対策が欠かせません。紫外線は1年を通して降り注いでいるため日焼け止めを塗る習慣をつけるのがおすすめです。外出時は直前に日焼け止めを塗り直したり、日傘や帽子を使用したりして、紫外線対策を行ってください。
ストレスを溜めない
ストレス状態では体の血流が悪くなり、血流が戻る際に活性酸素が発生してしまうため、できるだけストレスを溜め込まないようにしましょう。ストレスの発散方法は人それぞれですが、意識的に休憩時間を確保したり、趣味に没頭できる時間を確保したりして、心が安定する時間を定期的に設けてみましょう。仕事でストレスを抱えている人は、「仕事帰りにカフェに立ち寄る」「お気に入りの入浴剤で入浴する」など、ちょっとしたご褒美を日常に加えるのもおすすめです。
良質な睡眠をとる
良質な睡眠は活性酸素除去に役立ちます。寝室の湿度や温度、明るさなどを調整して睡眠環境を整えましょう。夜の入浴習慣をつけたり、就寝前はなんとなくスマホやPCを触らない、使用時間を減らすなどでブルーライトの影響を減らしたりすることが睡眠の質向上に役立ちます。ストレッチや瞑想をするのもおすすめです。また、起床後すぐに日光を浴びることで体内時計が整い、寝つきや寝起きの改善につながります。
まとめ
適度な活性酸素は体を機能させるために働きますが、増えすぎた活性酸素は体に悪影響を及ぼします。活性酸素は生活習慣などが原因で増えるため、まずは規則正しい生活習慣を意識してみてください。また、活性酸素の除去には食事も大いに影響するといわれています。活性酸素除去に役立つ食べ物や飲み物を取り入れ、栄養バランスの取れた食生活を心がけていきましょう。