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粘膜免疫の働きに欠かせないIgA抗体とは?免疫力を高める方法

感染症や病気にかからないためにウイルスと闘う免疫を強化するのも大切ですが、ウイルスが入ってこないように働く「粘膜免疫」を強化することも重要です。本記事では、粘膜免疫の役割や全身免疫との違い、粘膜免疫に欠かせないIgA抗体の重要性や産生を増やす方法を解説します。

粘膜免疫とは

口や目など、体には粘膜と呼ばれる部分が多数あります。この粘膜にはさまざまな役割があり、とくに注目されているのが免疫機能です。ここでは、粘膜免疫の機能や全身免疫との違いについてわかりやすく解説します。

粘膜免疫とは

体の外側は基本的に皮膚や粘膜によって覆われています。一見、体の外側とつながっているように見えるかもしれない口や鼻は、粘膜によって覆われています。たとえば、呼吸によって取り入れた空気は、鼻や口の粘膜でフィルターにかけられてから体内に取り込まれる仕組みになっているのです。そのため、呼吸によって取り込んだ空気に病原体が入っていた場合、粘膜が察知して侵入を防ぎます。このように、病原体が体内に入らないように働く粘膜の機能を「粘膜免疫」と呼びます。

粘膜免疫と全身免疫の違い

体の外側と接する部分である粘膜は、体内に病原体が入り込まないようにバリアを張る役割を持っています。しかし、粘膜免疫の機能が弱っていたり、免疫機能の記録にない病原体と出会ってしまったりした場合、粘膜免疫の機能が働かず、病原体が体内に侵入してしまうことがあります。この体内に侵入した病原体と戦う機能を持っているのが「全身免疫」です。全身免疫は次の2種類の免疫機能によって成り立っています。

  • 自然免疫:生まれつき備わっている免疫
  • 適応(獲得)免疫:一度体内に侵入した病原体のデータを記録し、再び同じ病原体が侵入しないようにバリアを張ったり、同じ病気にかかったときに軽度で済むように対応したりする

つまり、粘膜免疫が外側からの病原体の侵入を防ぎ、あわせて全身免疫の一つである自然免疫が記録されている病原体の侵入をガードします。万が一体内に病原体が侵入してしまった場合は、免疫細胞が病原体と戦い、病原体のデータを記録して適応免疫が機能するように働く仕組みとなっています。

粘膜免疫の機能が低下すると生じるリスク

食事バランスの乱れや睡眠不足、ストレスなどの影響を受けると、粘膜免疫の機能が低下してしまう可能性があります。粘膜免疫の機能が低下すると具体的にどのようなトラブルが発生してしまうのか解説します。

ウイルスなどの病原体が体内に侵入してしまう

粘膜免疫はウイルスをはじめとした病原体を体内に侵入させないように働く、いわば砦のような役割を果たしています。そのため、粘膜免疫の機能が低下して砦としての役割が果たせなくなると、ウイルスなどの病原体が体内に侵入してしまいます。その結果、病気にかかりやすくなったり、口内に炎症ができてしまったりする可能性があるでしょう。

アレルギー症状が出る可能性がある

粘膜免疫の機能は本来、病原体など体に悪影響を与える外敵を「抗原」として認識しています。しかし、粘膜免疫の機能が低下して異常が発生すると、花粉や自分自身など、「抗原」ではないものにも攻撃をするようになってしまうことがあります。花粉症の症状としてくしゃみや目のかゆみが出るのは、粘膜免疫の機能異常によるアレルギー反応です。

感染症予防のために働く粘膜免疫の「IgA抗体」とは

粘膜のなかで免疫機能として働いているのは、おもに「IgA抗体」という抗体の一種といわれています。「IgA抗体」は粘膜のなかでどのように働いているのか、また「IgA抗体」はどのように生まれているのか解説します。

感染予防に欠かせない「IgA抗体」の役割

粘膜免疫として体外から病原体が体内に入り込むのを防いでいるのは、おもに免疫細胞によって作られる「IgA抗体(免疫グロブリンA)」という抗体の一種です。免疫グロブリンという抗体はIgAのほかに、IgG、IgM、IgEなどがありますが、粘膜免疫において中心的な役割を果たしているのはIgA抗体といわれています。

IgA抗体は鼻水や唾液、十二指腸のなかに多く存在しています。鼻や口は呼吸によって病原体が入りやすく、十二指腸は食べ物の摂取によって病原体を取り込みやすいためです。また、IgA抗体は特定のウイルスだけでなく、さまざまな病原体にくっつく特徴を持っています。このように、IgA抗体は体の外側とつながりが深い部分に多く存在し、病原体にくっついて体内に侵入するのを防いでいるのです。

「IgA抗体」は腸内細菌のバランスが関わっている

IgA抗体は体外とのつながりが深い部分に多く存在しています。なかでも、腸管粘膜には免疫機能に関わる細胞のほとんどが存在しているといわれており、腸管粘膜で産生された細胞からもIgA抗体が作られているため、IgA抗体の数は腸内細菌のバランスと関わりがあるといえます。無数に存在する腸内細菌は、おもに次の3種類に分類できます。

  • 善玉菌:腸内を酸性にすることによって、悪玉菌の増殖を抑えて食中毒の感染やがんの原因となる物質を抑制する
  • 悪玉菌:悪玉菌が増えすぎると腸内を腐敗させたり、病気の原因となる有害物質を作ったりする
  • 日和見菌:善玉菌と悪玉菌のどちらか多い方の味方になり、活動に協力する

腸内細菌のおよそ7割は日和見菌であるといわれています。腸内で悪玉菌が増えると日和見菌も悪玉菌の味方をして腸内を腐敗させるため、悪玉菌よりも善玉菌が多い状態を保つことで、免疫機能が正常に保たれる効果が期待できます。

粘膜免疫に影響を与える「IgA抗体」の産生を増やす方法

粘膜免疫の要ともいえる「IgA抗体」の産生量は、生活習慣や食生活に関わっています。「IgA抗体」を増やすためにできることについて解説します。

腸内細菌のバランスを整える生活を心がける

増えすぎると悪さをする悪玉菌を抑えて善玉菌を増やす生活を心がけると、粘膜免疫の機能が正常に働けるでしょう。脂質の多い食事は悪玉菌を増やす原因になるといわれているので、脂質の摂りすぎに注意し、主食・主菜・副菜の栄養バランスが取れた食事を心がけてみてください。

また、睡眠時間は最低でも6〜7時間確保し、疲労やストレスを持ち越さないよう、睡眠の質を高める努力をするのも一つの方法です。睡眠の質は睡眠環境や寝るまでの生活習慣に大きく左右されます。寝室は光や香り、温度や湿度にこだわり、リラックスできる環境を作ることが大切です。そして、寝る前の食事やスマホやPCが発するブルーライトを浴びるのを避けるなど、睡眠を妨げない生活習慣をつけるのもおすすめです。

動物性たんぱく質を積極的に摂取する

動物性たんぱく質はIgA抗体をはじめとする免疫グロブリンの産生を促し、粘膜免疫の機能を高めてくれる効果が期待できます。そのため、レバーや、うなぎ、チーズなどを意識して食事に取り入れるのがおすすめです。また、にんじんやかぼちゃ、ほうれん草など、色の濃い野菜を積極的に摂取するのもおすすめです。緑黄色野菜は酸化の原因である活性酸素を抑制する効果も期待できるので、エイジング対策にも役立つでしょう。

また、動物性たんぱく質や緑黄色野菜とあわせて摂取したいのが、魚介類やナッツ類です。ミネラル類は体内で合成できないため、意識して食事から摂取しなければいけません。カキやカニなどの魚介類をはじめ、ごまやピーナッツなども食事に取り入れてみてください。少量のナッツ類をおやつにすると、効率的に栄養素を摂取しやすいでしょう。

善玉菌を含む食品とエサになる食品を摂取する

腸内細菌のバランスを善玉菌に傾けるためには、善玉菌が含まれる発酵食品や乳製品を食事に取り入れるのが有効といわれています。たとえば、ヨーグルトや納豆、チーズ、キムチ、みそなどの発酵食品には善玉菌が多く含まれます。

また、善玉菌をしっかりと働かせるためには、善玉菌のエサとなる食品をあわせて摂取する必要があります。善玉菌のエサとなるのは、オリゴ糖や食物繊維を含む食品です。たとえば、ご飯やパンなどの穀類や芋類、フルーツにはオリゴ糖や食物繊維が含まれています。オリゴ糖は砂糖にも含まれていますが、砂糖を一気に摂取すると血糖値が上がりやすくなるほか、肌荒れや生活習慣病を引き起こす原因となってしまうので、お菓子やジュースなどの摂りすぎには注意しましょう。

まとめ

粘膜免疫を強化することで病原体が体内に入り込むのを予防できます。粘膜免疫において、免疫細胞によって作られる「免疫グロブリンA(IgA)」が大きな役割を担っています。腸は「免疫グロブリンA(IgA)」を産生する免疫細胞が含まれているため、日常的に腸内細菌のバランスを整えることを心がけるのがおすすめです。免疫機能を高めて感染症や病気の予防を目指していきましょう。

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