「鉄分が不足するとどのような症状が出るの?」「鉄分不足を解消するには何を食べたらいい?」といった疑問やお悩みを抱えていないでしょうか。めまいやふらつきが続くと、「もしかして貧血かも?」と不安になるかもしれません。
本記事では、鉄分不足によって起こりうる症状や、鉄分補給におすすめの食べ物などについて解説します。鉄分不足かどうかをチェックする方法や、鉄分の吸収効率をよくする方法についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
鉄分不足による症状
体内の鉄分が不足すると、主にめまいや動悸、息切れ、頭痛、疲れやすさなどの症状があらわれます。鉄分が不足すると、赤血球に含まれる「ヘモグロビン」の量が減り、全身に運べる酸素の量が減るためです。ヘモグロビンとは、鉄分を含む「ヘム」という色素とたんぱく質が結合したもののことをいいます。血液中におけるヘモグロビンの濃度が低下した状態を「貧血」といい、貧血のなかでも最も多いものを「鉄欠乏性貧血」と呼びます。
年代別|鉄分不足になる原因
鉄分不足になる原因は、鉄分を含む食品の摂取不足だけではありません。次のように、月経による出血や、出血をともなう病気への罹患なども影響しています。
- 思春期:月経、過度なダイエット、部活動による大量の発汗など
- 成人女性:月経、過度なダイエット、多忙による食生活の偏りなど
- 妊婦:胎児への栄養供給や出産時の出血など
- 更年期~高齢者:出血をともなう病気への罹患、食欲減退など
鉄分の原因について、年代やライフイベント別に詳しく見ていきましょう。
思春期
思春期は月経がはじまることから、毎月一定の血液が失われることで貧血になりやすい時期です。また、美容のために過度なダイエットをすると、栄養不足から貧血につながる可能性もあります。思春期は部活動やスポーツを活発にする時期でもあるため、大量の発汗とともに体内の鉄分も失われやすいでしょう。
成人女性
月経のある20~40代の女性の約65%が、「貧血(鉄欠乏性)」もしくは「かくれ貧血」だとされています。過度なダイエットによる栄養不足や、多忙による偏った食生活によっても鉄分が不足する場合があるため注意が必要です。
妊婦
妊娠中は胎児に十分な酸素や栄養を届けるため、多くの血液(鉄分)が必要になります。とくに妊娠24週頃からは胎児へ優先的に鉄分を送るため、鉄欠乏性貧血になりやすいといわれています。妊娠中だけでなく、出産時の出血や授乳でも鉄分が失われるため、産後も注意が必要です。
更年期~高齢者
更年期では、月経量の減少とともに鉄分の需要は減りますが、子宮筋腫やがんなどの出血をともなう病気にかかりやすいことから、鉄分が不足しがちだといえます。高齢者は、加齢にともなう造血機能の低下により、貧血になりやすいとされています。「胃の粘膜が萎縮して鉄の吸収率が悪くなる」「食欲がなくなる」といったことも、栄養が偏って鉄分不足になりやすい原因のひとつです。また、高齢者では多くの薬を服用している場合が多いため、薬の影響で造血障害(血液が正常につくれないこと)が起きているケースも少なくありません。
鉄の1日の摂取推奨量
厚生労働省によると、年齢ごとの鉄分の摂取推奨量は次の表のとおりです。
年齢 | 男性 | 女性 | 妊婦 | 授乳婦 |
---|---|---|---|---|
生後0〜6ヶ月 | 0.27mg | 0.27mg | - | - |
生後7~12ヶ月 | 11mg | 11mg | - | - |
1~3歳 | 7mg | 7mg | - | - |
4~8歳 | 10mg | 10mg | - | - |
9~13歳 | 8mg | 8mg | - | - |
14~18歳 | 11mg | 15mg | 27mg | 10mg |
19~50歳 | 8mg | 18mg | 27mg | 9mg |
51歳以上 | 8mg | 8mg | - | - |
上記の表を見ると、1日に必要な鉄分の量は、性別や年齢などによって異なることがわかります。女性の摂取推奨量が男性よりも多く設定されている部分があるのは、月経による経血で失った鉄分を補う必要があるためです。また、妊娠中や授乳中の女性は、へその緒や母乳を通じて赤ちゃんに鉄分を供給する必要があるため、通常よりも多くの鉄分を必要とします。
鉄分補給におすすめの食べ物
鉄分が豊富な食材には、赤身肉やレバー、緑黄色野菜、豆類などが挙げられます。
<鉄分が豊富な食品と鉄分の含有量>
食品 | 1回使用量当たりの鉄分含有量 |
---|---|
レバー(1串50g) | 6.5g |
アサリ水煮(大さじ1杯 10g) | 3.8g |
牛ヒレ肉(1切れ80g) | 2g |
カキ(5~7個 100g) | 1.9g |
カツオ(タタキ4切れ80g) | 1.5g |
卵(Mサイズ 1個60g) | 1.1g |
鉄分には体に吸収されやすい「ヘム鉄」と吸収されにくい「非ヘム鉄」があり、ヘム鉄は肉や魚など、非ヘム鉄は野菜や卵、牛乳などに豊富です。鉄分不足を防ぐには、とくに体に吸収されやすい「ヘム鉄」を摂るよう心がけましょう。また、貧血症状を防ぐためには鉄分だけ摂取すればいいわけではなく、体に必要な栄養素をバランスよく摂ることが大切です。鉄分に加え、ヘモグロビンを構成している「たんぱく質」や、赤血球の合成に必要な「ビタミンB12」や「葉酸」なども意識して摂取することが大切です。
鉄分不足かどうかを確認する方法
下記のような症状がある場合は、体内の鉄分が不足しているかもしれません。
- めまいや立ちくらみが頻繁にある
- 顔色が悪く、まぶたの裏が白い
- 動悸や息切れ、疲れやすさなどがみられる
- 爪がスプーン状に変形している など
症状が強く出ていたり、複数みられたりする場合は、貧血による症状が出ている可能性があります。放っておくと重い貧血症状に発展する可能性があるため、我慢せずに医療機関を受診しましょう。
鉄分の吸収率を高めるコツ
鉄分の吸収率を高めるコツには、主に次のようなものが挙げられます。
- ヘム鉄を十分に摂る
- ビタミンCと一緒に摂る
- 食事の前後はコーヒーや紅茶などを控える
- 鉄分サプリを活用する
普段の生活に取り入れやすいものばかりなので、ご自身の生活スタイルに合うものから実践してみてください。
ヘム鉄を十分に摂る
上述したとおり、鉄分のなかでも吸収されやすい「ヘム鉄」を十分に摂ることが大切です。実際にベジタリアンの方は、肉を食べる方の1.8倍の鉄分が必要であるとされています。これは、肉や魚由来のヘム鉄の吸収率が、植物由来の非ヘム鉄よりも高いためです。また、肉や魚は非ヘム鉄の吸収を高めることもわかっています。
ビタミンCと一緒に摂る
ビタミンCには還元作用があり、鉄分の吸収率を高める作用があるとされています。ビタミンCが豊富な食材であるパプリカやブロッコリー、カボチャ、イチゴなどとともに鉄分が豊富な食材を摂れば、効率的に鉄分を補えるでしょう。鉄分とたんぱく質のどちらも豊富に含む食材には、牛肉やレバー、カツオ、アサリなどが挙げられます。
食事の前後はコーヒーや紅茶などを控える
コーヒーや紅茶、緑茶などのタンニンが含まれる飲み物は鉄分の吸収率を下げるため、食事の前後はなるべく控えたほうがいいでしょう。過度に神経質になる必要はありませんが、食事中や食事の前後はなるべく水を飲むことがおすすめです。
鉄分のサプリメントを活用する
仕事や家庭のことで忙しく、自炊する時間がとれない方は、サプリメントで鉄分を補給するのもひとつの方法です。鉄分サプリのなかでも、体内への吸収率の高い「ヘム鉄」のサプリメントを選ぶといいでしょう。ただし、非ヘム鉄が配合されているサプリメントでも、鉄分の吸収率を高めるためにビタミンCが一緒に配合されている場合もあります。サプリメントは普段の食事の工夫とあわせて、足りない部分を補う形で取り入れることがおすすめです。
鉄分不足に関するよくある質問
ここでは、鉄分不足に関する次の質問について回答します。
- 子どもの鉄分が不足するとどうなる?
- 鉄分不足に効果的な飲み物は?
- 男性でも鉄分が不足するとどのような症状が出る?
鉄分不足による症状や、鉄分を摂取する方法についてより詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
子どもの鉄分が不足するとどうなる?
子どもの鉄分が不足すると、次のような貧血症状がみられる場合があります。
- 顔面蒼白
- 体重が増えない
- 哺乳不良
- 不機嫌
- 頻脈
- 元気がない など
また、子どもの鉄分不足は発達障害の原因や、記憶力や学習能力の低下につながることもあります。
鉄分不足に効果的な飲み物は?
鉄分不足には、次のような飲み物がおすすめです。
- ココア
- アサイージュース
- プルーンジュース
- サジージュース
- 豆乳 など
食べ物だけで1日に必要な鉄分を補うことが難しくても、飲み物であれば取り入れやすいでしょう。近頃はコンビニやスーパーなどに鉄分入りの野菜ジュースやヨーグルトなども売っているので、忙しくて自炊ができないときや、外食が多めのときなどに活用するといいでしょう。
男性で鉄分が不足するとどのような症状が出る?
鉄分が不足すると、動悸や息切れ、頭痛、スプーン爪(爪がスプーンのように反る現象)、味覚障害などの症状が出る場合があります。また、男性で鉄欠乏性貧血の症状が出る場合は、胃がんや大腸ポリープなどの病気が隠れている可能性が高いとされています。普段から強い貧血症状を感じている方は、我慢せずに一度医師の診察を受けましょう。
まとめ
鉄分が不足すると、全身的な酸素不足から、だるさやめまい、動悸などの貧血症状があらわれる場合があります。鉄分補給には、肉や魚などに豊富なヘム鉄の摂取や、鉄分の吸収率を上げるビタミンCを同時に摂取するといいでしょう。鉄分を効率的に摂取するには、普段の食事の工夫とあわせてサプリメントを活用することもひとつの方法です。鉄分が不足しないよう日々の生活を見直し、不調に悩まない日々を過ごしてくださいね。